このページの要点
- お金に関わる作業を種類で分け、業務の範囲に含めるものと含めないものを書く。口座の ID やカードは原則として預けない。
- 準備・入力は受ける側、最終の承認と実行は任せる側に残す。承認は記録が残る方法に限る。
- 立替は、費用の種類・上限・事前承諾・精算の頻度を決める。受け取った金銭は引き渡す義務があり(民法646条1項)、自己のための消費は責任を生む(647条)。
- 督促は、報告と、任せる側の名義で作成した通知の送付(受ける側の名義では送らず、返答に応じた交渉もしない)までを事務の範囲とし、交渉や回収の代行は含めない旨を書く(弁護士法72条との関係)。
結論:お金に触れる業務は、「権限」「承認」「精算」を分けて決める
事務代行や経理の補助には、お金に関わる作業が混ざりやすいという特徴があります。備品や交通費を立て替える、請求書を作って送る、入金を確認する、振込のデータを用意する、現金や領収書を預かる、ネットバンキングやカードの操作を頼む、といった作業です。これらは、受ける側が他人のお金に触れる場面であり、誤りや使い込みがあれば、被害が金額として表れます。
契約書では、これらの作業が「経理事務」「付随する業務」の一語にまとめられ、権限の範囲も、承認の方法も、精算の手順も書かれていないことが少なくありません。お金の扱いで事故が起きてから、誰が承認したのか、誰が実行したのか、立て替えた費用は誰が負担するのかを探しても、手がかりがありません。
- お金に触れる作業は、種類を分けて範囲を書く:立替払い、請求書の発行、入金の確認、振込データの作成、現金・領収書の預かり、口座やカードの操作。
- 権限は、できること(準備、入力、提案)とできないこと(最終の承認、実行、設定の変更)を分ける。振込の最終承認は任せる側に残すのが基本。
- 立替は、事前の承諾の範囲と上限を決める。民法は、必要と認められる費用の償還を認めているが(650条1項)、何が必要かは契約で具体にしておく。
- 受け取ったお金や物は引き渡す義務があり(646条1項)、引き渡すべき金額を自分のために消費すれば責任を負う(647条)。この規律を、日常の精算の手順に落とす。
- 領収書や証憑の受渡し・保管は、契約上の手順として決める。法令上の保存の扱いは別の問題で、このページでは扱わない。
- 督促や回収に進む場合は、事務の連絡の範囲に限る。交渉や回収の代行に及ぶ書き方は避ける。
このページは、受ける側が他人のお金に触れる運用の統制に絞って説明します。報酬そのものの決め方は報酬の決め方のページで、アカウントの権限の分け方はアカウントの預け方のページで扱います。税の計算や申告に関わる判断は扱いません。
お金に触れる業務の種類と、危険の違い
お金に関わる作業は、受ける側の関与の深さによって、危険の大きさが異なります。まず、種類を並べます。
お金に関わる作業の種類と、考え方
| 作業 | 受ける側が触れるもの | 決めておくこと |
|---|---|---|
| 請求書の作成・送付 | 請求の金額、相手先の情報 | 金額・相手先の確認者、送付前の承認、発行名義 |
| 入金の確認 | 口座の入出金の履歴 | 閲覧のみとする。口座の操作の権限は与えない |
| 経費の立替払い | 受ける側自身のお金やカード | 立て替えてよい範囲と上限、事前の承諾、精算の期限 |
| 振込データの作成 | 振込先、金額 | 作成までを業務とし、最終の承認と実行は任せる側が行う |
| 現金・小口の預かり | 現金、領収書 | 金額の上限、保管の方法、受渡しの記録、定期の突合 |
| ネットバンキング・カードの操作 | 資金を動かす権限そのもの | 原則として、ID やカードを預けない。預ける場合は、上限と承認の条件を厳格に決める |
表の下のほうにいくほど、資金を直接動かす権限に近づき、事故が起きたときの影響が大きくなります。上のほうの作業は、受ける側の作業の質が問われますが、お金そのものが動くわけではありません。事務代行の契約を結ぶとき、まず、下のほうの作業を業務の範囲に含めるのか、含めないのかを、はっきり決めるのが基本です。業務の範囲の決め方は業務範囲の線引きのページで説明しています。
また、お金の操作を伴う作業には、誰が最終の責任を負うかの問題があります。振込先を間違えた、金額の桁を誤った、二重に振り込んだ、といった誤りは、作業した人のミスにも、確認しなかった人の見落としにもなり得ます。作業と承認を分けて、誰が何を確認するのかを決めておくことは、責任の所在を明らかにするためにも欠かせません。
民法の基本:受け取った物の引渡し、金銭の消費、費用の前払と償還
事務代行は、法律行為でない事務を委託する契約であり、準委任(民法656条)として、委任の規定が準用されるのが通常です。委任の規定には、お金や物の扱いに関する条文が、いくつか含まれています。契約書に書かれていなくても働く、基本の規律です。
お金の扱いに関する民法の条文
民法646条1項
受任者は、委任事務を処理するに当たって受け取った金銭その他の物を、委任者に引き渡さなければならない。収取した果実についても、同様とする。
民法647条
受任者は、委任者に引き渡すべき金額または委任者の利益のために用いるべき金額を自己のために消費したときは、その消費した日以後の利息を支払わなければならない。なお損害があるときは、その賠償の責任を負う。
民法649条
委任事務を処理するについて費用を要するときは、委任者は、受任者の請求により、その前払をしなければならない。
民法650条1項
受任者は、委任事務を処理するのに必要と認められる費用を支出したときは、委任者に対し、その費用及び支出の日以後における利息の償還を請求することができる。
民法644条
受任者は、委任の本旨に従い、善良な管理者の注意をもって、委任事務を処理する義務を負う。
ここでは、条文の趣旨を要約しています。
646条1項は、事務の処理にあたって受け取った金銭などを、委任者に引き渡す義務を定めています。たとえば、取引先から預かった代金、返金された金額、お釣りなどは、受ける側のものではなく、任せる側に引き渡すべきお金です。647条は、この引き渡すべき金額を自己のために消費した場合には、消費した日以後の利息を支払い、なお損害があるときはその賠償の責任を負う、と定めています。いわゆる使い込みを、民事上の責任の面から規律する条文です。
この二つの条文は、契約書に書かれていなくても適用されますが、実務では、契約書に「預かった金銭は、他の資金と分けて管理し、一定の期間内に引き渡す」という運用を書いておくことが、事故の防止になります。条文は、事故が起きたあとの責任の根拠にはなりますが、事故を防ぐ運用までは決めてくれないからです。
649条と650条は、事務を処理するために費用が必要なときの、前払と償還の規律です。委任者は、受任者の請求により費用を前払しなければならず(649条)、受任者が必要と認められる費用を支出したときは、委任者に対してその償還を請求できます(650条1項)。この規律は、特約がなければ当然に働きますが、「必要と認められる」かどうかには、争いが生じる余地があります。そのため、契約書では、立て替えてよい費用の種類、金額の上限、事前の承諾の方法を、具体に書いておきます。
立替・前払・償還:事前承諾と精算の手順
立替払いは、事務代行で日常的に生じます。交通費、郵送費、備品の購入、オンラインサービスの利用料、印刷代などです。少額の立替でも、積み重なると金額が大きくなり、あとで精算するときに「そんな費用は頼んでいない」「必要な費用だった」という争いになりやすい分野です。
立替の基本の流れ
- 1 対象の合意立て替えてよい費用の種類(例:郵送費、交通費、備品代、サービスの利用料)と、1件あたり・月あたりの上限を、契約書または別紙で決める。
- 2 事前の承諾上限を超える費用や、種類にない費用は、支出の前に、任せる側の承諾(メールやチャットでよい)を得る。
- 3 証憑の保存領収書や明細を、受け取って保管する。支出の日、金額、目的、承諾の記録を、台帳や一覧表に残す。
- 4 精算の請求月ごとなど一定の期間でまとめて、証憑を添えて請求する。請求の期限も決める。
- 5 確認と支払任せる側は、承諾の範囲と照合して確認し、一定の期間内に支払う。疑問があるときは、問い合わせる。
前払を受ける運用(預り金を受け取って支出する形)の場合は、預り金の管理と精算の手順を、別に決めます。
書き方の例(一般的な例) 立替・経費の書き方
対象と上限
理由「業務のために」では、何が含まれるのか線が引けない。種類と上限と事前承諾の三つを書けば、精算の争いを減らせる。
精算の手順
理由請求の頻度と、確認と支払の期限があれば、立替が積み上がることを防げる。
前払
理由前払を受ける場合は、預り金の分別と、使途の報告が、使い込みの防止になる。
ツールの利用料も、この枠組みで整理します。受ける側が、業務のためにサービスの契約をして、その費用を立て替えることがあります。そのサービスの契約者が受ける側自身になるのか、任せる側になるのかで、契約が終わったあとの扱い(解約の責任、データの帰属、アカウントの引継ぎ)が変わります。任せる側の名義で契約するなら、アカウントの管理者の権限も任せる側が持つことになり、アカウントの預け方の整理と一致します。
承認する人と実行する人を分ける:振込の最終承認は任せる側に残す
お金の誤りや不正を防ぐ、最も基本的な方法は、承認する人と実行する人を分けることです。一人が全ての段階を担当すると、誤りも不正も、他の人に気づかれにくくなります。事務代行では、受ける側が準備や入力を担当し、任せる側が最終の承認を行う、という分け方が基本になります。
お金に関わる作業の、役割の分け方
準備・入力
請求書の下書き、振込データの作成、経費の一覧の作成など。
置き場所受ける側の業務として、業務の範囲の条項に書く
確認・承認
金額、相手先、日付の最終の確認と承認。
置き場所任せる側が行う。承認の方法(画面上の承認、メール、押印など)を決める
実行
振込の実行、請求書の送付、支払。
置き場所原則として任せる側が行う。受ける側が実行する場合は、承認の記録が残ることを条件にする
記録・保管
承認の記録、証憑、台帳。
置き場所受ける側が作成し、任せる側が確認する。保管場所を決める
役割の分担は、小さな規模でも守れる範囲で決めます。承認の方法が複雑すぎると、運用が続きません。
振込の最終承認を任せる側に残す場合、実務では次の運用がよく使われます。受ける側が、振込先と金額を一覧にして任せる側に送る。任せる側が、請求書や契約書と照らして確認し、承認する。承認を受けた内容を、任せる側自身が銀行の画面で実行する。あるいは、銀行のサービスにある、データ作成者と承認者を分ける機能を使う。サービスによって機能は違いますが、考え方は共通しています。
受ける側に、口座の ID やカードを預ける運用は、原則として避けます。やむを得ず預ける場合は、1回あたりの上限、1日あたりの上限、振込先を事前に登録したものに限る、といった制限を、サービスの設定でかけておくことが重要です。契約書だけで制限を書いても、画面上でその制限が効いていなければ、約束は機能しません。この点は、アカウントの権限の設計と同じです。
確認の問いと理由承認の仕組みについて、契約前に確かめたい問い
振込や支払の最終承認は、誰が行うのか。
最終承認が受ける側のみにあると、誤りも不正も止める人がいない。任せる側が承認者として関与する形にする。
承認の方法と記録は、何で残すのか。
口頭の承認は、あとから確かめられない。メール、チャット、承認機能のログなど、記録が残る方法に限る。
銀行やカードの操作の権限を、受ける側に与えるのか。
与えるなら、上限と登録済みの振込先に限るなどの制限が、画面の設定で効いているかを確かめる。
承認者が不在のときは、どうするのか。
不在時に承認を省く運用は、事故のもとになる。代わりの承認者、または待つ運用を決める。
請求書の発行と入金確認:範囲と、督促の線引き
請求書の作成や送付、入金の確認は、事務代行で頻度の高い作業です。ここでも、誰が何を確認するのかを決めておく必要があります。
請求書の作成では、金額、数量、相手先、日付、支払期日、振込先といった記載の正確さが、受ける側の作業の質として問われます。他方で、金額や条件の根拠となる契約の内容は、任せる側が把握している事項です。受ける側が間違えた場合と、任せる側の指示が間違っていた場合では、責任の所在が違います。そのため、請求書の作成は、任せる側が指示した内容に基づいて下書きを作り、送付の前に任せる側が確認する、という流れにするのが安全です。発行の名義(誰の名で請求するのか)も、契約書に書いておきます。
入金の確認は、口座の入出金の履歴を閲覧して、請求との照合を行う作業です。口座の操作の権限は不要で、閲覧のみの権限があれば足ります。照合の結果、入金が遅れている請求があった場合に、受ける側が何をするのかを、次の三段階で整理しておくと分かりやすくなります。
入金が遅れている請求への、受ける側の対応の段階
- 報告遅れている請求の一覧を、任せる側に報告する。ここまでは、事務の範囲として、問題が生じにくい。
- 連絡の取次ぎ・通知文の送付任せる側の名義で作成した通知文を、受ける側が送付する。受ける側の名義で送らず、相手方の返答に応じた交渉もしない。送る内容は任せる側が決め、受ける側は送付の事務だけを行う。
- 交渉・回収の代行支払の条件を交渉する、分割の合意をする、回収のために相手方と折衝する。これは、事務の範囲を超える可能性があり、契約の範囲に含めるかどうかを慎重に考える。
三段階目について、弁護士法72条は、弁護士または弁護士法人でない者は、報酬を得る目的で、訴訟事件その他一般の法律事件に関して鑑定、代理、仲裁、和解その他の法律事務を取り扱い、またはこれらの周旋をすることを業とすることができない、という趣旨を定めています(ただし、この法律または他の法律に別段の定めがある場合は除かれます)。どの行為が法律事務に当たるかは、事案ごとの判断になりますので、このページで判断はしません。契約書の書き方としては、受ける側の業務の範囲を「支払状況の報告」「任せる側が決めた内容の通知の送付」に限り、交渉や回収の代行は含まない、と明記しておくのが、範囲の線引きとして整理しやすい方法です。範囲外の業務の書き方の全体は、範囲外の業務の書き方のページで説明します。
領収書・証憑の受渡しと保管、現金の預かり
立替や精算の根拠になる領収書、明細、請求書の写しは、受ける側が受け取って保管することが多い書類です。ここでは、契約上の手順として、受渡しと保管の約束を決めます。
まず、受渡しです。任せる側から受ける側に渡す場合も、受ける側から任せる側に返す場合も、渡した日と内容の記録を残します。紙の領収書は、紛失しやすく、再発行できないものもあります。写真やスキャンで写しを取ってから渡す、受領の確認を返信で受ける、といった運用が実務的です。紙とデータの預かりの基本は資料の預かりのページで説明しています。
次に、保管の場所と期間です。契約書には、受ける側が、いつまで、どこに、どのように保管し、終了時に返却または廃棄するのかを書きます。ここで述べるのは、契約上の約束としての保管です。帳簿や証憑の保存義務の有無や期間は、別の法令の問題であり、このページでは扱いません。保存義務のある書類を、受ける側が先に廃棄してしまうことのないよう、廃棄の前に任せる側の確認を求める、という書き方は、契約上の約束として有効です。
現金の預かりがある場合は、金額の上限、保管の方法(鍵のかかる場所、他の資金との分離)、受渡しの記録、定期の突合を決めます。預かった現金は、民法646条1項により、委任者に引き渡すべき物です。受ける側のお金と混ざると、引き渡すべき金額が分からなくなり、647条の責任の問題に発展します。預かった現金を、小口の立替の原資として使うのか、受渡しのたびに精算するのかも、あらかじめ決めておきます。
誤りと使い込みへの備え:確認の頻度と、事故が起きたときの手順
お金の誤りや不正は、気づくのが遅れるほど、被害が大きくなります。そのため、契約の運用に、定期的な確認の機会を組み込みます。たとえば、月ごとの立替の精算書の確認、預かり金の残高の報告、振込の履歴と承認の記録の突合などです。
誤りが見つかったとき、受ける側が自分のミスに気づいた場合は、すぐに任せる側に報告する義務を、契約書に書いておきます。報告が遅れると、誤って振り込んだ資金の取戻しなど、事後の対応の選択肢が限られていきます。誤りの原因が、任せる側の指示の誤りや、情報の遅れにある場合は、その事実も記録しておきます。
使い込みが疑われる場合の責任は、民法上は、646条・647条の規律のほか、債務不履行(415条)や不法行為(709条)の規律に服します。損害賠償の範囲や上限の考え方は、ミスと責任のページで整理しています。契約書の責任制限の条項を置くときには、故意や重大な過失による場合と、預かった金銭を自己のために消費した場合を、制限の対象から除くことを検討します。
条文例第○条(金銭及び費用の取扱い)
- 乙は、本業務の遂行に当たり、甲のために受け取った金銭その他の物を、乙の資金その他の物と区別して管理し、甲の指示に従い、遅滞なく甲に引き渡す。
- 乙が本業務のために立て替えることができる費用は、別紙に定める種類及び上限の範囲内のものとし、これを超える費用又は別紙にない種類の費用は、乙が、事前に甲の書面による承諾を得たものに限る。
- 乙は、費用の精算を、領収書その他の証憑を添えて、一定の期間ごとにまとめて甲に請求し、甲は、確認のうえ、請求を受けた日から一定の日数以内に支払う。
- 振込その他の支払の最終的な承認及び実行は、甲が行う。乙は、振込先及び金額の一覧その他の支払の準備に関する作業を行う。
- 乙は、金銭の取扱いに関する誤りがあったこと又はそのおそれを知ったときは、直ちに甲に報告する。
条文は、書き方の例(一般的な例)です。数値(日数・金額)は「一定の日数」「別紙の上限」として、契約ごとに決めます。
お金の扱いで、起きがちなこと
- 契約書には「経理事務」としか書かれておらず、振込の操作まで任されていたのか、準備までだったのかが争いになる。
- 立替が積み上がってから精算を請求したところ、「そんな費用は承諾していない」と言われた。
- 受ける側が ID を預かり、振込の実行まで一人で行っていたため、誤りに誰も気づかなかった。
- 預かった現金と受ける側の資金が混ざり、引き渡すべき金額が分からなくなった。
- 入金の遅れている相手に、受ける側が独自の判断で強い督促を送り、取引先との関係が悪化した。
- 契約が終わったときに、領収書や台帳が受ける側の手元に残り、返却の手順がなかった。
お金の扱いの確認表
お金に触れる業務を任せる前・受ける前の確認
- お金に触れる作業の種類を分け、業務の範囲に含めるものと含めないものを、書面に書いたか。
- 準備・入力は受ける側、最終の承認と実行は任せる側、という役割の分担を決めたか。
- 口座の ID やカードを預けるか。預けるなら、上限と登録済みの振込先などの制限が、画面の設定で効いているか。
- 立て替えてよい費用の種類、上限、事前承諾の方法、精算の頻度と期限があるか。
- 預かった金銭を、他の資金と区別して管理し、引き渡す手順が決まっているか。
- 請求書の発行名義、作成と送付前の確認者、入金遅れのときの対応の範囲(報告・通知の送付まで)が決まっているか。
- 領収書・証憑の受渡し、保管場所、終了時の返却の手順があるか。
- 誤りに気づいたときの報告の義務と、定期の確認の機会があるか。
よくあるご質問
事務代行に、振込の実行まで任せてもよいですか。
一律に不可というわけではありませんが、準備と入力は受ける側、最終の承認と実行は任せる側、という分け方が基本です。実行まで任せる場合は、1回あたりと1日あたりの上限、登録済みの振込先に限るなどの制限を画面の設定でかけ、承認の記録が残る形にしておきます。
受ける側が立て替えた費用は、必ず任せる側が負担しますか。
民法650条1項は、委任事務を処理するのに必要と認められる費用の償還請求を認めています。ただし、何が必要と認められるかは争いになり得るため、契約書で費用の種類、上限、事前承諾の方法を定めておくと、争いを避けやすくなります。定めた範囲外の費用は、事前の承諾がなければ、請求が認められにくくなります。
預かった現金を、受ける側が一時的に自分の資金と混ぜて管理してもよいですか。
避けるべきです。受け取った金銭は委任者に引き渡す義務があり(民法646条1項)、引き渡すべき金額を自己のために消費したときは責任を負います(同法647条)。混ざると引き渡すべき金額が分からなくなるため、別に管理し、定期的に突合する運用にします。
入金が遅れている相手への督促も、事務代行に任せてよいですか。
支払状況の報告や、任せる側の名義で作成した通知を受ける側が送付する(受ける側の名義では送らず、返答に応じた交渉もしない)ところまでは、事務の範囲として整理しやすいといえます。交渉や回収の代行は、弁護士法72条との関係が問題になり得る領域です。契約書の範囲は、報告と、任せる側の名義の通知の送付に限り、交渉や回収の代行は含まない旨を明記するのが、線引きとして分かりやすい書き方です。
領収書や証憑は、いつまで受ける側が保管するのですか。
契約上の約束として、保管場所、保管期間、終了時の返却または廃棄の手順を書いておきます。帳簿や証憑の保存に関する法令上の扱いは別の問題で、このページでは扱っていません。保存が必要な書類を、受ける側が先に廃棄しないよう、廃棄の前に任せる側の確認を求める書き方が有効です。
あわせて読みたいページ
本ページは一般的な情報提供です。個別の取引への当てはめは、業務の内容や預けるものの種類、当事者の事業の形によって異なることがあります。書き方の例として紹介している内容は、一般に見られる書き方を整理した例で、特定の事業者や案件を示すものではありません。条文は e-Gov法令検索で確認しています。参考: e-Gov法令検索 / 個人情報保護委員会 / 公正取引委員会 / 厚生労働省